業務のデジタル化が進む中、多くの企業でペーパーレス化への関心が高まっています。
しかし、「コストがかかりそう」「業務が混乱するのでは」などの不安から、踏み出せずにいる企業も多いのではないでしょうか。
本記事では、そんな経営者や管理者の方に向けて、ペーパーレス化の基礎知識から実施方法やメリット・デメリット、成功事例までをわかりやすく解説します。
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ペーパーレス化とは
ペーパーレス化とは、業務上の紙の使用を削減し、文書や情報を電子化して管理・運用することです。
従来、紙の書類やファイルはビジネス活動において欠かせないものでした。しかし、デジタル技術の進歩により、紙に依存しない業務運営が可能になりました。
近年では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の一環として、多くの企業がペーパーレス化に積極的に取り組んでいます。
ペーパーレス化が進められている背景
ペーパーレス化が進められている背景には、いくつかの要因があります。
1つは、デジタル技術の進歩により、文書の電子化や共有が容易になったことです。また、働き方改革やリモートワークの広がりにより、紙ベースの業務の非効率さが目立つようになったこともあるでしょう。さらに、環境意識の高まりを受けて、企業の社会的責任(CSR)への貢献が重要視されるようになったことも無視できません。
こうした要因が相まって、企業のペーパーレス化への取り組みが加速しています。
ペーパーレス化の対象となる文書
ペーパーレス化の対象となる文書は多岐にわたります。
以下のような文書が代表的です。
- 契約書、稟議書、申請書などのビジネス文書
- 請求書、領収書、伝票などの経理書類
- 会議資料、営業資料・パンフレット、マニュアル、チラシ・ポスターなど
2022年に施行された電子帳簿保存法の改正により、多くの経理書類が電子化の対象となり、ペーパーレス化が加速しています。
一方で、以下のように紙で保管する必要があるものはペーパーレス化に適さないため、すべての紙をなくせるわけではありません。
- 現物の所持が証明になる免許証や許可書類など
- 緊急時に参照するための災害マニュアルや手引きなど
ペーパーレス化の推進状況
企業のペーパーレス化は着実に進んでいます。
ペーパーロジック社が2023年に実施した調査によると、約6割の企業が2023年に社内のペーパーレスの「推進を行った」と回答しました。多くの企業がペーパーレス化の重要性を認識し、積極的に取り組んでいることがわかります。
一方で、ペーパーレス化を推進していない企業の8割は2024年も推進しないと回答しており、企業間で対応が二極化している傾向が見られます。
参考:ペーパーロジック-【リサーチ】ペーパーレス化に伴う2024年度予算に関する調査
ペーパーレス化の方法
ペーパーレス化には大きく2つのアプローチがあります。
1つは、今ある紙の文書を電子化して紙を減らすこと、もう1つは、今後の業務で紙を使わないようにすることです。2つのアプローチを組み合わせて取り組むことで、効果的にペーパーレス化を推進できます。
それぞれの内容を解説します。
紙の文書の電子化
1つ目は、既存の紙文書を電子化する方法です。
対象は、日常的に参照する文書や法定保存文書、スペースを多く占める文書などから優先的に選定すると良いでしょう。
紙の文書を電子化する際は、OCR(光学文字認識)機能付きのスキャナーを活用することで、電子化した文書内の検索が可能です。また、クラウドストレージサービスを利用すれば、時間や場所を問わずアクセスでき、ペーパーレス化のメリットを最大限に活かせます。
ITツールによる紙を使わない業務フローへの転換
今ある紙をなくすだけでなく、業務フローを紙を使わない形に転換することも重要です。
さまざまなITツールやクラウドサービスを活用し、文書の作成から承認、保管までの一連の流れをデジタル化して、紙の使用を抑制します。
部署間や取引先とのやり取りが発生する業務は、関係者全員がスムーズに移行できるよう、十分な調整と準備が必要です。この過程で業務フローの見直しを行えば、より効率的な業務運営が実現できるでしょう。
ペーパーレス化のメリット
ペーパーレス化によって、企業はさまざまなメリットを享受できます。
代表的な3つのメリットを見てみましょう。
コスト削減
ペーパーレス化の大きなメリットの1つは、コスト削減です。
紙代や印刷機器のリース代、インクやトナーなどの消耗品費を削減できます。また、キャビネットや倉庫スペースを縮小できれば、オフィス賃料の削減も可能です。
さらに、資料の印刷やコピー、製本などの作業時間を省くことで、間接的なコスト削減も見込めます。長期的に見れば、大きなコスト改善が期待できるでしょう。
業務の効率化
ペーパーレス化は、業務プロセスを効率化できる点もメリットです。
紙に依存した業務では、必要な情報の検索や共有に多くの時間がかかります。電子化した文書なら、検索や共有が容易で、複数人での同時編集も可能です。
これにより、情報共有や意思決定のスピードが上がり、業務の生産性が向上します。また、リモートワークの実施が容易になり、柔軟な働き方も実現できるでしょう。
環境負荷の低減
3つ目のメリットは、ペーパーレス化によって環境負荷の低減に貢献できる点です。
紙の使用量を減らすことで、森林資源の保護はもちろん、紙の製造や輸送、廃棄にかかるCO2排出の抑制にもつながります。
企業の社会的責任(CSR)が重視される現代において、環境負荷を低減するペーパーレス化は、企業の評価やイメージを高める重要な取り組みの1つです。
ペーパーレス化のデメリット
ペーパーレス化には多くのメリットがある一方で、実施に際してのデメリットもあります。
ペーパーレス化の検討時に注意すべき3つのポイントを解説します。
初期コストの発生
ペーパーレス化を実現するには、一定の初期投資が必要です。
具体的には、ITツールの導入やデバイスの購入、クラウドサービスの利用料などの費用がかかります。また、既存の紙の文書を電子化する作業にも、多くの時間とコストを要するでしょう。
しかし、長期的に見ると業務効率化やコスト削減で回収できる可能性も高いため、投資効果を慎重に見極めることが重要です。
従業員の抵抗感や習熟の負担
ペーパーレス化にともなう業務プロセスの変更が、従業員の抵抗感を生む可能性がある点もデメリットの1つです。
特に、ITリテラシーの低い従業員にとっては、新しいITツールの習得が負担になる場合があります。また、長年紙の資料を使用してきた従業員が、電子化に抵抗感を感じることも少なくありません。
ペーパーレス化を進める際には、全社的な意識改革やサポート体制の構築が不可欠です。
紙の方が見やすい場合がある
文書によっては、電子化された資料よりも、紙のほうが見やすい場合があることにも注意が必要です。
例えば、複数の資料や前後のページを比較して見たい場合には、一覧性の高い紙のほうが作業しやすいでしょう。また、デジタル画面の長時間の閲覧は目の疲労を引き起こす可能性もあります。
すべてをペーパーレス化するのではなく、文書の性質や用途に応じて紙とデジタルを使い分けることも重要です。
ペーパーレス化に役立つITツール
ペーパーレス化の効果的な推進には、ITツールの導入が欠かせません。
ペーパーレス化に役立つ代表的な3つのITツールを紹介します。
ワークフローシステム
ワークフローシステムは、申請・承認プロセスを電子化するツールです。
稟議書や経費精算、休暇申請などのさまざまな社内手続きをオンライン上で完結できます。紙の書類の回付や押印が不要になるため、承認プロセスの可視化と迅速化が可能です。
紙が不要になれば、リモートワーク環境下でも場所や時間に縛られずにワークフローを進められ、働き方改革の推進にも貢献します。
クラウドストレージ
クラウドストレージは、インターネット上にデータを保存し、共有・管理できるサービスです。
文書を電子化してクラウド上で一元管理することで、物理的な保管スペースが不要になり、情報の検索性も向上します。また、複数の従業員が同時に文書を編集できるため、チーム作業の効率アップも期待できるでしょう。
自社でのサーバ購入や運用が不要なため、初期投資を抑えながら、柔軟で効率的な文書管理が実現できます。
Web会議システム
Web会議システムは、インターネットを介して遠隔地とリアルタイムで会議を行えるツールです。
画面共有やホワイトボード機能を使うことで、紙の配布資料が不要になります。また、録画機能を使えば、議事録作成や欠席者への情報共有も容易になり、紙の使用を削減できるでしょう。
リモートワークに欠かせないツールで、ペーパーレス化だけでなく、働き方改革にも大きく貢献します。
ペーパーレス化の成功事例
ここで、実際にITツールを活用してペーパーレス化に成功した、2つの企業の事例を紹介します。
(※ここで取り上げている事例はあくまでも参考であり、特定の企業や製品・サービスをお勧めするものではございません。)
【ワークフローシステム】ペーパーレス化でスピード決裁
日本全国に拠点を持ち、基礎工業事業を営む丸五基礎工業株式会社では、社内の大量の紙書類による非効率な決裁プロセスに課題を抱えていました。
ペーパーレス化の必要性を認識した同社は、ワークフローシステム「コラボフロー」を導入します。選定理由は、Excelで画面設計ができる扱いやすさと、特殊なケースにも対応できる柔軟さでした。
導入の結果、従来10〜14日かかっていた決裁が1日で完了。また、紙の出力や保管、郵送の手間も省けるようになりました。この成功を機に社内のDX化への抵抗感が減少し、他のクラウドサービスの導入も進んでいます。
【クラウドストレージ】ペーパーレス化で脱・紙マニュアル
中国・四国エリアでドラッグストア事業を展開する株式会社ザグザグは、紙マニュアルの検索性の悪さや業務の属人化に課題を抱えていました。
同社は、紙媒体依存からの脱却を目指し、クラウドストレージサービス「NotePM」を導入します。ツール選定の決め手は、シンプルな操作性と高い検索性でした。
導入後は、マニュアル検索時間が5分から30秒に短縮され、業務効率が大幅に向上。9冊分のバインダーマニュアルがデジタル化され、更新時の印刷と差し替え作業も不要になりました。
本部では情報共有の意識が高まり、個人所有のマニュアルを組織全体で共有する動きも進んでいます。
ペーパーレス化を成功させるポイント
ペーパーレス化は、単にITツールを導入すればうまくいくというわけではありません。効果的に進めるためには、適切な準備と導入戦略が必要です。
ペーパーレス化を成功させるための、3つのポイントを解説します。
目的に合ったツールの選定
ペーパーレス化の成功には、自社の目的と業務フローに適したツールの選定が重要です。
まずは、コスト削減、業務効率化、情報共有の円滑化などペーパーレス化の目的を明確にし、どの部分をペーパーレス化するかを特定しましょう。
多機能すぎるツールは、かえって現場での活用を妨げる可能性があります。必要最小限の機能を備え、直感的に操作できるツールを選定することで、スムーズな導入と定着を図ることが可能です。
現場従業員の理解と協力
ペーパーレス化の成功には、現場従業員の理解と協力も欠かせません。
新しいシステムやツールの導入は、従業員の業務に大きな変化をもたらすため、抵抗感を生む可能性があります。まず、経営層がペーパーレス化の目的や利点を明確に伝え、全社的な取り組みであることを示すことが大切です。
その上で、従業員へのサポート体制を整備し、不安や抵抗感を軽減することで前向きな協力を引き出せるでしょう。
段階的なペーパーレスへの移行
ペーパーレス化を一度にすべての業務に導入すると、混乱が生じやすいため、段階的に進めることが賢明です。
まずは、特定の部署や業務プロセスから始め、成功事例を作りましょう。得られた知見や課題を基に、他の部署や業務へと徐々に拡大していきます。
段階的なアプローチにより、リスクを最小限に抑えつつ、着実にペーパーレス化を推進できるでしょう。
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まとめ
ペーパーレス化は、単なる紙の削減にとどまらず、企業のDXの重要な一歩です。
コスト削減や業務効率の向上、環境負荷の低減などのメリットにより、競争力強化と持続可能な経営につながります。導入を成功させるためには、目的を明確にし、自社に合った施策を段階的に実施していくことが重要です。
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