社内システムは、企業の基幹業務やバックオフィス業務などを支える重要なITシステムです。しかし、自社で開発・運用している社内システムは、ユーザー部門から「使いにくい」と言われることも少なくありません。そこには、社内専用のシステムであるがゆえの理由があります。
社内システムが使いにくい理由と生じる問題、使いにくい社内システムを生まない方法、使いやすくするための対策を解説します。
経験豊富なメディアラボのIT専門家が、一つひとつのご相談に丁寧に対応させていただきます。
社内システムとは
社内システムとは、企業が業務効率化や生産性向上のために、自社専用に開発・運用しているITシステムのことです。
自社で一からスクラッチ開発するケースや、パッケージソフトを導入して専用にカスタマイズするケースなどがあります。いずれの場合も、企業に固有のニーズや業務プロセスに合わせて設計・開発している点が大きな特徴です。
社内システムは、自社専用に作られたシステムのため、クラウドサービスなどの共同利用型システムに比べて痒い所に手が届くメリットがあります。一方で、社内でしか使われない専用システムであるがゆえに、使いにくさや非効率な面が問題視されることも多いのも事実です。
社内システムが使いにくい理由
社内システムはなぜ使いにくいと言われることが多いのでしょうか?
主な3つの理由を解説します。
社員しか使わないので使い勝手が二の次に
社内システムが使いにくい理由の1つに、機能性が重視され、使い勝手が二の次にされやすい点が挙げられます。
先述したとおり、社内システムは自社専用のシステムです。そのため、どんなに使いにくくても、社員は業務のために使わざるを得ません。始めのうちは苦情が出ても、時間が経てば使いにくさに慣れてしまいます。
仮に、クラウドサービスを利用しているとしたら、あまりに使いにくければ別のサービスへの乗り換えも検討するでしょう。しかし、専用に構築した社内システムは、簡単には乗り換えられません。そのため、機能面のニーズを満たすことが優先され、使い勝手は二の次となって、使いにくい社内システムが生まれやすくなります。
複雑な業務に合わせてシステムを作っている
複雑な業務に合わせて社内システムが作られている点も、使いにくくなる理由の1つです。
社内システムを利用するユーザー部門は、システム導入によって業務が変わることを嫌う傾向にあります。そのため、複雑な業務やたまにしか発生しないレアケースなども含めて、できるだけ現状の業務を社内システムに盛り込もうとしがちです。
開発部門が適切に要件をコントロールできないと、複雑な業務がそのまま実装されてしまいます。その結果、複雑で使いにくい社内システムが出来上がる可能性が高まるでしょう。
システムが古く時代に合っていない
古い社内システムの場合、時代に合わず使いにくく感じることも理由の1つです。
社内システムが導入されてから長い期間が経過している場合、現代のビジネスニーズや技術に対応できていない可能性があります。例えば、現在であればAPIで簡単に連携できるシステムとのあいだで、ファイルのダウンロード・アップロードで連携しなければならないケースなどがあるでしょう。このように、今ではあたり前のことができないと、使いにくさを感じる原因となります。
特に、スマホやクラウドに慣れ親しんでいる若い社員にとっては、古い社内システムは使いにくく感じるでしょう。
社内システムが使いにくいと起こる問題
社内システムは機能さえ満たしていれば、使いにくくても特に問題ないと感じる方もいるかもしれませんが、そうではありません。
社内システムが使いにくいと起こる問題を見ていきましょう。
社員の生産性低下
社内システムが使いにくいと起こる問題の1つ目は、社員の生産性低下です。
使いにくい社内システムは、社員の生産性に直接的な悪影響を与えます。例えば、性能が足りず情報の検索に時間がかかる社内システムでは、その分の無駄な「待ち」が発生するでしょう。また、入力ミスを誘発するようなインターフェースの場合、無駄な修正作業が頻発します。
このように、使いにくい社内システムは、社員の貴重な時間を奪う原因です。時間を奪われた社員は本来の業務に集中できず、生産性の低下を招きます。本来は不要な残業での対応を強いられることになるかもしれません。
無駄なコストの発生
使いにくい社内システムによる時間の浪費は、無駄なコストの発生にもつながる問題です。
社内システムが使いにくいと複雑な操作に時間がかかったり、操作ミスが原因でやり直しが発生したりと、無駄な時間を浪費します。一つひとつは数秒から数分かもしれませんが、それが毎日、かつ多くの社員分が積み重なれば膨大な時間となり、コストも膨らむでしょう。
社内システムの使いにくさが原因で余計にかかったコストが算出されることは少ないため、あまり表面化しません。しかし、企業の見えないコスト負担となっていることを理解することが重要です。
社員の不満の蓄積
社内システムが使いにくいと、社員の不満が蓄積される点も見過ごせない問題です。
日々の業務で使いにくい社内システムを強制的に使わされる社員には、徐々にストレスや不満が蓄積していきます。改善を訴えても対応されず、業務がスムーズに進まないフラストレーションは、モチベーションの低下にもつながるでしょう。
こうした不満がシステム部門への不信感に変わると、別のシステム導入時などにユーザー部門の十分な協力が得られなくなる可能性もあります。関係が悪化すると、IT戦略全般にも支障をきたすことになるかもしれません。
使いにくい社内システムを生まない方法
生産性低下やコスト増加などの原因となる使いにくい社内システムを生まないためには、どのような方法があるのでしょうか。
新たに開発する社内システムを、使いにくくしないために実践すべき3つの方法を解説します。
開発部門の社内システムに対する意識を変える
使いにくい社内システムを生まない方法の1つ目は、開発部門の意識を変えることです。
先述したように、社内システムは使い勝手が悪くても、業務のために使わざるを得ないものです。しかし、その裏では、生産性低下や見えないコスト負担など多くの問題が発生していることを理解しなければなりません。
設計段階から使いやすさを考慮して、機能面だけでなくユーザビリティーを高める意識を持つことが大切です。また、使いにくい社内システムに対する社員からのフィードバックを積極的に取り入れて、その後のシステム開発に活かす姿勢も求められます。
システム化に合わせて業務を標準化する
新たな社内システムを構築する際には、システム化に合わせた業務プロセスの標準化も必要です。
手作業や他のツールで行っている業務をそのまま社内システムに実装しようとすると、使いにくくなる可能性が高いでしょう。業務を行なっているユーザーは、多くの場合、業務プロセスを変えることを嫌います。しかし、使いやすい社内システムを実現するためには、システムに合わせた業務の標準化が欠かせません。
業務プロセスを見える化し、無駄な業務や重複している作業を削ってシンプルにすることが求められます。また、イレギュラーな業務は無理にシステム化せず、手作業を続けるという判断も重要です。
操作マニュアルやトレーニングを充実させる
操作マニュアルやトレーニングを充実させることも、使いにくい社内システムを生まない方法の1つです。
どんなに優れた社内システムでも、操作方法を正確に理解していなければ、使いにくいと評価されてしまいます。使いにくさを解消するための方法の1つが、操作マニュアルやトレーニングの充実です。
社内システムの開発と並行して、わかりやすい操作マニュアルを作成します。操作マニュアルを作成しておけば、ユーザー部門の担当者が入れ替わった際にもスムーズに業務継続できるでしょう。また、操作マニュアルだけでなく社内システム提供開始の前後に、実践形式のトレーニングを実施することも効果的です。
社内システムを使いやすくする対策
ここまでは、新たに作る社内システムを使いにくくしないための方法を紹介してきました。
最後に、すでに利用されている使いにくい社内システムに対してできる3つの対策を紹介します。
機能や技術を刷新して再構築
使いにくい社内システムを使いやすく変える対策の1つに、機能や技術の刷新による再構築があります。
この対策は、古くなった社内システムの改善に有効です。時代遅れの機能や技術をモダンな技術に置き換えることで、使いやすく刷新します。
モダンな技術による再構築は、モダナイゼーションやマイグレーションと呼ばれ、古くなってレガシー化したシステムの再構築でよく用いられます。再構築で失敗しやすいのが、現行踏襲にこだわって再び使いにくいシステムを作ってしまうことです。
再構築を機に複雑な機能の見直しや、モダンな技術を取り入れたUI/UXの改善を行い、使い勝手を高めることが求められます。
ITコンサルタントを入れて改善
ITコンサルタントを入れることも、使いにくい社内システムの改善に有効です。
自社の人員だけでは、社内システムへのこだわりや愛着などがあるため、客観的な評価や改善策の立案が難しいことは少なくありません。そのような場合は、外部からITコンサルタントを入れて対策を検討することが有効です。
第三者を入れることで、客観的な視点で社内システムの問題点が洗い出されます。ITコンサルタントは、最新の技術やトレンド、他社事例などに精通しており、ニーズに合わせたソリューションの提案が期待できるでしょう。
パッケージソフトやクラウドサービス(SaaS)を導入
社内システムを改善するのではなく、別のシステムに乗り換える方法もあります。
自社で社内システムを開発しない場合には、パッケージソフトの導入やクラウドサービス(SaaS)の利用が選択肢になるでしょう。パッケージソフトやクラウドサービス(SaaS)は、多くの企業向けに開発・提供されているため、ユーザビリティを重視して設計されています。また、業界標準の機能を搭載しており、最新の技術にも対応している点がメリットです。
一方で、自社の業務に合わせた独自の機能カスタマイズは、原則できません。自社の業務をシステムに寄せて見直す必要があります。しかし、システムに寄せすぎてもうまくいかないこともあるため、十分に納得した上で導入することが重要です。
まとめ
社内システムは、社内専用であるがゆえに使い勝手が重視されず、使いにくくなりがちです。
使いにくい社内システムを作らないためには、設計段階から業務の標準化やユーザビリティの作り込みが欠かせません。すでに稼働している使いにくい社内システムを改善したい場合には、再構築やパッケージ・クラウドサービス(SaaS)の活用などが有効です。
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