業務効率化は、業務改善のための有効な手段の1つです。生産性や収益性を高め、企業の成長や競争力の強化につながります。ただし、効率化が行き過ぎたり、急ぎ過ぎたりすると、思わぬ弊害を招く可能性があるため注意が必要です。
業務改善と業務効率化の関係から、具体的な方法や成功事例、実施するときの注意点までをわかりやすく解説します。
業務改善と業務効率化の関係
「業務改善」と「業務効率化」はよく似た概念であるため、両者を同じものと捉えている人や、違いが分からないという人は多いでしょう。
両者は、業務改善のほうがより総合的な取り組みであり、業務効率化は業務改善を実現するための手段の1つです。まずは、業務改善と業務効率化のそれぞれの意味と関係を解説します。
業務改善とは
業務改善とは、業務の「ムリ」「ムダ」「ムラ」を排除し、より良い結果や価値を生み出すための取り組みです。
近年、少子化による人手不足や働き方改革による労働時間の削減、デジタルトランスフォーメーション（DX）の加速など、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。
従来のやり方を漠然と続けている企業は、時代の変化に取り残され、生き残りが難しくなっていくでしょう。
業務改善は、「どうすればより良い結果が得られるか、顧客や従業員の満足度を高められるか」を考え、業務プロセスを多面的に見直していく取り組みです。
業務効率化とは
一方、業務効率化とは、既存の業務プロセスを最適化し、同じ結果をより少ないリソースで達成するための取り組みです。
人手不足や働き方改革によって、従来のやり方を続けているだけでは、これまでどおりの成果を出すことすら難しくなってきました。
業務効率化は、「どうすればより早く、より少ない労力でできるか」に焦点を当てて、業務プロセスのパフォーマンスを高めていく活動です。
業務効率化は業務改善の手段の1つ
業務改善と業務効率化は、よく混同されますが、上で解説したように異なる取り組みです。業務効率化は、業務改善を実現するための代表的な手段の1つと位置付けられます。
業務改善の目的である、より良い結果や価値を生み出すためには、業務の効率化だけでは実現できません。少ない時間や労力で業務を進める効率化ばかりを追求すると、品質の低下や従業員への過度な負担などの問題が生じるリスクがあります。これでは、より良い結果や価値を生み出したとは言えないでしょう。
業務改善では、業務効率化を含む総合的な取り組みによって、生産性や顧客・従業員の満足度を向上させることが求められます。
業務効率化が業務改善にもたらす効果
業務効率化は業務改善の手段の1つであることがわかりました。では、業務を効率化すると、どのような効果が期待できるでしょうか。
業務効率化が業務改善にもたらす3つの効果を解説します。
生産性の向上と収益性の改善
業務効率化が業務改善にもたらす効果の1つは、生産性の向上と収益性の改善です。
業務効率化により、ムダな業務や重複した作業を排除することで、作業時間が短縮されます。これにより、少ない時間で同じ成果を出すことが可能です。効率化によって余裕ができた従業員は、より付加価値の高い業務や創造的な業務に時間を割けるようになります。
こうした業務効率化をきっかけとした人材シフトがさまざまな現場で起これば、組織全体の生産性向上が可能です。同じ人員とリソースで、より多くの成果を生み出せるようになり、企業の収益性改善と競争力強化への寄与が期待できます。
従業員の負担軽減とモチベーション向上
従業員の負担軽減とモチベーション向上も、業務効率化が業務改善にもたらす効果の1つです。
業務効率化によって単純作業や反復的なタスクが自動化されれば、従業員は繰り返し作業から解放され、負担が軽減します。働き方改革で問題視される長時間労働の改善にもつながり、従業員のワークライフバランスを整えることも期待できるでしょう。
定型的な業務から解放された従業員は、より戦略的で付加価値の高い業務に従事できる機会が増えます。仕事へのやりがいや達成感が高まり、職務満足度とモチベーションの向上にもつながるでしょう。
顧客満足度の向上
業務効率化による社内プロセスのムダの排除は、顧客満足度の向上にもつながります。
効率化によって社内の業務処理が迅速化されると、顧客からの問い合わせや要望に対する対応時間が短縮され、顧客は素早く的確なサービスを受けることが可能です。業務プロセスの最適化によってミスや遅延が減少すれば、顧客は安心してサービスや商品を利用できるでしょう。
また、業務効率化によるコスト削減効果を顧客に還元することで、より魅力的な価格設定が可能となり、顧客獲得にも効果を発揮します。このように、業務効率化は顧客からの信頼を高め、顧客満足度の向上に有効です。
業務改善に役立つ業務効率化の方法・アイデア
業務改善のための業務効率化には、さまざまな取り組みがあります。
代表的な4つの方法・アイデアを紹介します。
業務の標準化・マニュアル作成
業務効率化による業務改善の実現方法の1つに、業務の標準化・マニュアル作成があります。
業務の属人化は、業務効率を低下させる大きな要因の1つです。属人化とは、業務が特定の個人の経験やスキルに依存した状態のことで、不在時の業務停滞や品質のバラつきが生じるリスクがあります。
属人化の問題を解決するためには、業務の標準化とマニュアル作成が有効です。標準化により、誰が担当しても変わらない効率と同品質の作業を可能にします。また、丁寧なマニュアルを整備しておくことで、新しく配属された人でも素早く戦力化できるでしょう。
業務の標準化やマニュアル作成の効果を高めるためには、1度実施して終わりではなく、継続的に見直しと改善を繰り返すことが重要です。
ムダな業務の廃止・統合
ムダな業務の廃止や統合も、業務効率化に大きな効果を発揮します。
企業にとって、重複業務や価値を生まない業務の存在は、生産性低下の大きな要因です。ムダな業務を特定し、廃止・統合することで業務効率化による業務改善を図れます。
まず、業務プロセス全体を見える化し、複数箇所で重複している業務や形骸化した報告作業などのボトルネックを特定しましょう。これらの業務が本当に必要かを精査し、不要と判断されたら廃止や統合を検討します。
1度整理しても、ムダな業務は時間とともに生まれてくるものです。定期的に業務プロセスを見直して廃止・統合を図ることで、効率化による業務改善の効果を継続できるでしょう。
アウトソーシングの活用
業務効率化による業務改善には、アウトソーシングの活用も効果的です。
企業がすべての業務を自社内で完結することは、ときとして非効率な場合もあります。特に、企業が本業とする強みとは関係の薄い非コア業務でその傾向は顕著です。
例えば、経理・人事・ITサポート・カスタマーサービスなどの間接部門が挙げられます。これらの業務をアウトソーシングに出すことで、社内のリソースをコア業務に集中させて効率化を図ることが可能です。
アウトソーシングを成功させるためには、信頼できる委託先を見つけることが欠かせません。品質やコスト、セキュリティなどの観点から、慎重に選定しましょう。
ITツールの活用
ITツールの活用も、現代の業務効率化による業務改善には欠かせない方法です。
人手による業務効率化には限界があります。適切なITツールを導入することで、業務の自動化や情報共有の円滑化を実現でき、業務効率の大幅な向上が可能です。例えば、RPA（Robotic Process Automation）を導入すれば、定型的な事務作業を自動化し、ミスの減少と処理時間の短縮が期待できます。
DXの進展にともない、ITを活用できる企業とできない企業の間には大きな生産性の格差が生まれています。ITツールの導入は、単なる効率化だけでなく、企業の持続的な成長のための戦略投資と捉えるべきでしょう。
業務効率化による業務改善の成功事例
ここで、業務効率化を行い業務改善に成功した企業の事例を見ていきましょう。
アウトソーシングとITツールの活用事例を紹介します。（※あくまでも効果をイメージしていただくための一例として掲載しております。）
【アウトソーシング】定型業務を外注し社員がアイデアを出せる環境づくり
化粧品や健康食品の製造・販売を行う株式会社協和は、社員がよりクリエイティブな仕事に時間を割けるようにしたいという思いがありました。その思いを実現するため、経理・人事部門における外注可能な業務のほぼすべてをアウトソーシングすることを決めます。
アウトソーシング先の選定では信頼性とコスト面を考慮し、経理や人事を一括して任せられる芙蓉アウトソーシング＆コンサルティング株式会社を選びました。一括委託によって業務の分断を避け社内調整の手間を省くことで、管理部門の従業員は人事評価制度の改善など、より戦略的な業務に時間を割けるようになりました。
同社では、定型業務の外注による業務効率化によって、社員の学習時間を創出しスキルアップも実現。少数精鋭で顧客ニーズに敏感に対応できる組織づくりを進めています。
参照元：芙蓉アウトソーシング＆コンサルティング株式会社-事例紹介
【タスク管理ツール】手書きや重複作業を効率化して業務時間を大幅削減
主に自動車関係部品のプレス金型設計・製造を行う株式会社クマガイは、Excelや印刷物での情報共有の難しさや、日報入力の重複業務に課題を抱えていました。そこで、業務の効率化と標準化を目指してタスク管理ツールの導入を検討します。
同社では、シンプルな操作性と直感的な使いやすさ、ユーザーの自由度の高さなどを決めて意に、タスク管理ツールの「Jooto」を導入しました。導入後、業務進捗管理や日報入力、社内指示書の発行、顧客依頼情報の管理などに活用。工数管理ツールと連携することで、日報入力が不要となり月に80時間かかっていた作業が1時間以内に削減できたといいます。
今後は「Jootoを見れば全て分かる状態」を目指し、海外拠点にも活用を広げて業務改善を進めていくとのことです。
ITツールを活用して業務の効率化を実現している事例も紹介しましたが、メディアラボでも中小企業向けに業務改善をサポートするツールを提供しています。
会社様ごとに、業務内容に合わせてオリジナルのツールを構築可能ですので、ご興味のある方はぜひ一度お問い合わせください。
無料相談も実施中ですので、より詳しくお話を聞きたい場合はお申込みいただけますと幸いです。
業務効率化による業務改善の注意点
ここまで見てきたように、業務効率化は業務改善のための有効な手段の1つですが、実践する際には注意すべき点もあります。
業務効率化を進めるときの3つの注意点を解説します。
効率ばかりを追求しない
業務改善のための業務効率化を進める際には、効率ばかりを追求しないことが重要です。
業務プロセスの簡略化やリソース削減が行き過ぎると、製品・サービスの品質が損なわれ、顧客満足度の低下につながりかねません。また、従業員への負担が過度に増えれば、モチベーションの低下や離職率を高める原因にもなります。
業務効率化を図る際は、顧客満足度や従業員満足度とのバランスをとることが重要です。短期的なコスト削減だけでなく、長期的な視点で持続可能な効率化を目指すことが真の業務改善につながります。
現場従業員の理解と協力を得る
現場従業員の理解と協力は、業務効率化による業務改善を成功させるために欠かせません。
業務効率化を強力に推し進めるためには、トップダウンのリーダーシップが必要ですが、実際に効率化や改善を実践するのは現場の従業員です。現場従業員の理解と協力を得られなければ、効率化を計画どおりに進めることは難しいでしょう。
業務効率化の目的や現場にとってのメリットをしっかりと説明し、従業員の共感を得ることが重要です。従業員が効率化の意義を理解し、納得することで積極的な参加を促せます。現場の声を取り入れることで、従業員のモチベーションも向上し、業務効率化と業務改善がよりスムーズに進むでしょう。
段階的に導入して効果を測定する
業務効率化による業務改善を進める際には、1度にすべての業務を効率化するのは得策ではありません。
最初から大規模な効率化を目指すと、混乱を招いたり、予期せぬ問題が発生したりする可能性が高まります。小さな範囲から段階的に効率化を導入し、ノウハウと成功体験を積み重ねていくアプローチが有効です。段階的に進めることで、現場の従業員も変化に対応しやすくなり、スムーズな導入が可能となります。
また、各段階で定量的な指標と定性的な指標の双方で効果を測定し、フィードバックを収集することが重要です。PDCAサイクルを回しながら継続的に効率化を進めることで、より確実で持続的な業務改善を実現できるでしょう。
まとめ
少ない時間とリソースで成果をあげる業務効率化は、より良い結果や価値を生み出す業務改善のための手段の1つです。
業務効率化には、業務の標準化やアウトソーシング、ITの活用などの方法があります。取り組みを成功させるためには、効率化ばかりを追求せず、現場と協力して段階的に改善していくことが重要です。
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