業務改善とコスト削減は、どちらも企業にとって重要な取り組みです。業務改善によって、コスト削減を実現できることも少なくありません。
しかし、やり方を間違えるとコスト削減の効果が得られないばかりか、逆効果になることもあるため注意が必要です。
業務改善とコスト削減の関係や3種類のコスト削減方法、実践の注意点を解説します。
経験豊富なメディアラボのIT専門家が、一つひとつのご相談に丁寧に対応させていただきます。
業務改善とコスト削減の関係
本題に入る前に、業務改善とは何か、業務改善とコスト削減はどのような関係にあるのかを振り返っておきましょう。
業務改善とは
業務改善とは、業務プロセスの効率化・最適化を図ることで生産性や品質を向上させる取り組みです。
具体的には、無駄な作業の削減、業務の標準化、ITツールの導入などを通じて、業務の「ムリ・ムダ・ムラ」を削減します。
近年、業務改善の重要性が高まっている背景には、少子化による労働力不足や働き方改革による労働時間短縮の要請、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進などがあります。
こうした社会環境の変化に適応し、競争力を維持・向上させるために、継続的な業務改善は避けて通れない取り組みです。
コスト削減は業務改善で得られる効果の1つ
業務改善とコスト削減は密接に関連していますが、「業務改善=コスト削減」ではありません。
業務改善の本質は、業務の生産性や品質を向上させることにあります。改善活動の中で無駄を排除し、効率化を図ることによって、結果としてコスト削減が実現されるのです。
つまり、コスト削減は業務改善によってもたらされる効果の1つであり、それのみを目的としてしまうと、本質的な業務改善が見落とされる可能性があります。
長期的な視点で業務の生産性や品質を高めることで、持続可能な形でコスト削減を実現することが重要です。
企業で発生する3つのコスト
業務改善によるコスト削減方法の前に、企業活動で発生するコストを確認しておきましょう。大きく以下の3つに分類されます。
- オペレーションコスト
- オフィスコスト
- エネルギーコスト
それぞれの特徴や具体例を紹介します。
オペレーションコスト
オペレーションコストとは、企業の日常的な業務運営に関わる費用のことです。具体的には、以下のような項目があります。
- 人件費:従業員の給与や福利厚生費など
- 製造費:製品やサービスを生産するための材料費や加工費など
- 物流費:商品や材料の輸送費用など
- 外注費:外部業者への委託費用など
オペレーションコストは、企業活動の根幹を支える重要なコストであり、多くの企業で最も大きな割合を占めます。
オフィスコスト
オフィスコストとは、事業を行うためのオフィス運営にかかる費用のことです。具体的には、以下のような項目があります。
- 賃貸料:オフィススペースの賃借費用など
- 消耗品費:オフィスで使用する文具や備品の費用など
- 管理費:清掃や保守をはじめとしたビル管理費用など
- 通信費:電話やインターネットの利用料金など
リモートワークの普及などにより見直しが進むコストですが、依然として多くの企業にとって大きな負担となっています。
エネルギーコスト
エネルギーコストとは、オフィスや工場で使用する電気、ガス、ガソリンなどのエネルギーにかかる費用のことです。具体的には、以下のような項目があります。
- 電気料金:オフィスや工場で使用する電力の費用など
- ガス料金:暖房や調理に使用するガスの費用など
- 水道料金:事業活動に必要な水の使用料など
- 燃料費:車両や機械の運転に必要な燃料費など
環境意識の高まりや、エネルギー価格の高騰により、注目が高まっているコストです。
業務改善によるオペレーションコストの削減方法
紹介した3つのコストのうち、業務改善でもっとも削減効果を期待できるのがオペレーションコストです。
業務改善によってオペレーションコストを削減する4つの方法を解説します。
ムダな業務の削減
ムダな業務の削減は、業務改善のもっとも基本的な取り組みです。
ムダな業務とは、価値を生み出さない作業や重複したタスクを指します。たとえば、形骸化した会議、過剰な承認プロセス、重複したデータ入力などがその代表例です。
ムダな業務の削減により、不要な作業に費やす時間を削減し、より付加価値の高い業務に注力できるようになります。それにより、以下のようなオペレーションコストの削減が可能です。
- ムダな業務が減ることによる残業代の削減
- 人員配置の最適化による人件費の削減
また、オペレーションコストのほかにも、廃止した業務の消耗品費やシステム費用などの削減も期待できるでしょう。
ムダな業務の削減は、関係者の理解と協力を得ながら進めることで、モチベーション低下を防いで持続的な改善を実現できます。
業務プロセスの見直し
業務プロセスの見直しも、業務改善の中心となる取り組みです。
現行の業務の流れを分析し、非効率な部分などを洗い出して改善します。業務プロセスの見直しにより、作業の効率化や品質向上が図られ、以下のようなオペレーションコストの削減が可能です。
- 作業時間の短縮による残業代の削減
- ミスが減ることによる修正コストの削減
業務プロセスの見直しでは、現場の意見を十分に取り入れ、実態に即して改善を進めることが大切です。
ITツールの活用
ITツールの活用は、業務改善とオペレーションコスト削減を両立できる有効な取り組みです。
ITツールの導入により、業務を自動化・効率化して生産性を向上させることで、以下のようなオペレーションコストの削減が可能です。
- 作業の自動化による人件費の削減
- 精度の向上によるミスの修正コストの削減
- 意思決定の迅速化による機会損失コストの削減
ITツールの導入では、初期費用とランニングコストを十分に検討し、費用対効果を慎重に評価することが重要です。
アウトソーシングの活用
アウトソーシングの活用は、業務改善を図りながらオペレーションコストを削減するのに適しています。
アウトソーシングを導入することで、従業員がコア業務に集中できるようになり、生産性の向上が可能です。オペレーションコストの観点では、以下のような効果が期待できるでしょう。
- 人員の再配置による人件費の削減
- 非コア部門の採用・教育費の削減
- 固定費の変動費化による柔軟なコスト管理
また、オペレーションコストではありませんが、外注部門のオフィスコストやシステム費用なども削減できます。
アウトソーシングによる業務改善とコスト削減の実現には、信頼できる業者選びが重要です。
業務改善によるオフィスコストの削減方法
業務改善の施策の中には、ITの活用で、オフィスコストの削減につながるケースもあります。
業務改善によってオフィスコストを削減する3つの方法を解説します。
テレワークの導入
テレワークの導入は、業務改善を図りながらコスト削減にもつながる施策です。
テレワークの導入によって、より柔軟な働き方が可能になり、従業員のワークライフバランスや生産性が改善されます。また、以下のようなオフィスコスト削減も可能です
- オフィススペースの縮小による賃貸料や管理費の削減
- 文具や設備にかかる消耗品費の削減
また、オフィスコスト以外にも、従業員の通勤が減ることで交通費の削減も期待できるでしょう。
ただし、すべての業務をテレワーク化できるわけではないため、業務の性質を考慮して、適切な範囲での導入が重要です。
ペーパーレス化
ペーパーレス化も、業務改善とオフィスコスト削減を両立できる有効な方法です。
ペーパーレス化による資料の電子化で、情報の共有や検索が容易になり、業務効率が大幅に向上します。また、紙の運用が減ることで以下のオフィスコスト削減が可能です。
- 紙代や印刷にかかる消耗品費の削減
- コピー機のリース料や保守料の削減
- 資料保管のためのキャビネットや倉庫代の削減
また、オフィスコストのほかに、資料のコピーや製本にかかっていた人件費も削減できるでしょう。
すべてを一気にペーパーレス化することは現実的ではないため、資料の重要度や使用頻度を考慮て、段階的に導入を進めましょう。
クラウドサービスの活用
クラウドサービスの活用も、業務改善を図りながら、オフィスコストの削減が可能です。
クラウドサービスの導入によって、情報の共有や管理が容易になり、業務効率の向上が図れます。オフィスコストの観点では、以下のような削減が可能です。
- IT機器の購入・運用費用の削減
- サーバールームの維持費用の削減
- ソフトウェアライセンス費用の削減
また、オフィスコスト以外にも、自前のシステム開発・運用にかかるエンジニアの人件費削減も期待できるでしょう
クラウドサービスでは月額利用料がかかるため、自社に合ったサービスやプラン選びが重要です。
業務改善によるエネルギーコストの削減は難しい
オペレーションコストやオフィスコストと異なり、業務改善によるエネルギーコスト削減は難しいでしょう。これは、業務改善だけでは、オフィスのエネルギー消費は大きく変わりにくいためです。
あえて挙げると、テレワークの導入があります。オフィスの使用時間が減れば、電気代や空調費用の削減が可能です。しかし、効果は限定的で、大幅なコスト削減にはつながりにくいでしょう。
効果的なエネルギーコスト削減のためには、業務改善以外のアプローチが必要です。たとえば、安価な電力会社への切り替えや省エネ機器の導入、従業員への省エネ意識の啓蒙などが挙げられます。
エネルギーコスト削減は、業務改善とは切り離して検討するのが良いでしょう。
業務改善によるコスト削減の注意点
ここまで見てきたように、業務改善によってコスト削減を実現できます。しかし、進め方を間違えると効果が得られなかったり、一時的な削減に終わってしまったりするため注意が必要です。
業務改善によるコスト削減を進める際の注意点を解説します。
業務改善でコスト削減ばかりを追求しない
業務改善でコスト削減ばかりを追求すると、本来の目的から外れてしまう可能性があります。
業務改善は、業務プロセスの効率化・最適化を図ることで生産性や品質を向上させる取り組みです。コスト削減に過度に注力すると、短期的な経費節減が優先され、結果的にサービスや製品の質が低下する可能性があります。
これは業務改善の本来の目的から外れてしまうため、望ましくありません。
また、業務改善には一時的にコストがかかる場合もあります。たとえば、新しいシステムの導入や従業員の教育・訓練には費用が必要です。これらの費用は長期的に見れば、効率化や生産性向上によるコスト削減につながります。
目先のコスト削減にとらわれず、長期的な利益を見据えて業務改善に取り組むことが重要です。
従業員のモチベーションを下げるコスト削減をしない
過度なコスト削減は、従業員のモチベーションを低下させるリスクがあります。
業務改善と称してコスト削減を追求し、従業員に過度の負担を強いることは避けましょう。一時的にコストを削減できるかもしれませんが、従業員の疲弊やモチベーション低下は、長期的には生産性を悪化させる可能性があります。
生産性が悪化すれば、削減した以上のコスト増加も考えられるでしょう。
業務改善を進める際には、従業員のモチベーションに配慮し、より働きやすい環境を整えることが重要です。
効果の測定や見直しを継続する
業務改善によるコスト削減の効果を最大化するためには、一度の取り組みで終わらせるのではなく、継続的な測定と見直しが重要です。
改善策を導入した後は、効果を定量的に測定しましょう。期待した効果が得られていない場合は原因を特定し、改善策自体の見直しや新たな対策の検討が必要です。
さらに、ビジネス環境や技術の変化に応じて、既存の改善策が適切でなくなる場合もあります。定期的に改善策の妥当性を検証し、必要に応じて新たな手法の導入も検討しましょう。
PDCAサイクルを回すことで、持続的な業務改善とコスト削減を実現できます。
まとめ
コスト削減は業務改善で得られる効果の1つです。業務改善の施策によって、おもにオペレーションコストやオフィスコストが削減できます。
業務改善によるコスト削減の効果を高めるためには、業務改善本来の目的を見失わず、継続的に取り組むことが重要です。
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